口の悪い、彼は。
 

「おい。そんなにキョロキョロすんなよ」

「っ!す、すみません……。部長の部屋ってこんな感じなんだな~と思って、つい」

「別に普通だろ。同じマンションなんだし、高橋の部屋も同じ感じじゃねぇのか?」

「広さと間取りは少し違いますけど、部長の部屋って思ったより……、あ、いえ」

「あ?何だよ」


ビジネスバッグを床に置き、部長はネクタイを緩めながら怪訝な表情を私に見せた。

初めて見るネクタイを緩める姿に、また私の心臓が大きく跳ねる。

ネクタイを緩めてYシャツのボタンをはずす手や、いつもは見ることのない首もとがすごくセクシーだ。

……どうしよう……。

心臓が持たないかもしれない……。


「高橋?」

「あっ、えっと……お、怒らないでくださいね?意外と普通でちょっと安心しました。普通に物が置いてあるし、きっちりしすぎてなくて……部長も普通の人なんだなって」

「……はぁ。ほんとお前は俺に変なイメージ持ってんな」

「そんなことはないと思いますけど……たぶん」

「あるだろ。まったく」


ふぅと息をつきながら部長は私から顔をそらす。

怒っちゃったのかな?

でも、私が部長に持っているイメージは悪いものじゃない。

怖いと思うことも多いけど、むしろ……。

 
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