悪魔の誘惑【BL】
 
「何か飲むか?」

「自分で買ってきたからいいよ。辻村くんも飲むでしょ?」


 そう言って、コンビニ袋の中身をテーブルに並べ始める。

 ビールとチューハイが4本ずつ。

 その数に、慈人はがっくりと肩を落とした。

 坂下は本気でヤケ酒を決め込むらしい。

 慈人は酒に弱い訳では無いが、これから泣き言を聞かされると思うと憂鬱になる。

 とは言え、折角自分を頼って来てくれた友人を無下に扱う事は出来ない。


「夕食の残りもんだけど、食うか?」


 慈人が酒のつまみになりそうなものをテーブルに並べて行くと、坂下は「ありがとう」と笑みを見せた。


「辻村くんて自炊してんだぃね。俺料理とかさぁ絶対無理だしさ、手料理出してくれるとかさぁポイント高いしさぁ、辻村くんが女の子だったらさぁ、絶対惚れてるって」


 酔って普段より方言が強く出ている坂下の褒め言葉に、慈人は苦笑いだ。

 坂下がソファを背凭れにテーブルについたので、慈人はソファに座って坂下の隣に足を下ろした。

 坂下の後頭部を何となく見詰めながら、軽い口調で話し掛ける。
 
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