風が、吹いた



「気にしなくていいよ。俺、一人暮らしだから。」




なんてことない、というように、先輩は答えた。



あの家は、確かに小さめのものだが、一人暮らしにしてはかなり大きい。



しかもそれはそれで、問題な気がする。



いくら、犬と人間の関係でも、一人暮らしの男性の家にいっていいものかどうか。



たった一言で、色んなことを一気に考えなくてはならない状況に追いやられてしまった。




「どうして、一人暮らししてるんですか?」




とりあえず、口をついて出た言葉はこれだった。




「うーん。家族がいないわけじゃない。でもいても意味の無いって言うのかな。高校入学を機に、自分で家を出たくて出てるんだ。」



そう言って、話を終わらせるかのように、先輩は自転車に跨る。
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