風が、吹いた


「んーそんなことないけど。ま、できないことはないかな。今までやったとこが範囲でしょ?」




私を追い抜かして、階段に足をかけていた浅尾が、呆れたように振り返る。




「人間は忘れる生き物だから生きていけるんだろうが」




肩を落として階段を上がる浅尾を追いかける。




「じゃ、テストできないのは生きてる証拠だから、仕方ないね」




隣に並んで、いたずらっぽく言うと、浅尾は一瞬天を仰いで、




「…そーゆーことだな」




と、諦めの溜め息をついた。
< 140 / 599 >

この作品をシェア

pagetop