風が、吹いた



「…千晶、起きて?」




もう少し、寝ていたい…



えーと、ここはどこだっけ。



……………




「!」




がばっと体を起こすと、さっきよりもやや増えた乗客の冷たい視線にさらされた。




隣で肩を揺らして笑っている椎名先輩を見て、できるものならこの場からいなくなりたい衝動に駆られる。



「降りるよ」




繋いだままの手を引っ張られて、電車を降りた。





「すぐに起こしてくれれば良かったのに…」




完璧な八つ当たりをしてみる。




「見てたかったから。起こすのもったいなくって」



「!」



八つ当たりが墓穴を掘ることになったらしい。



見られてたのか、と今更ながら顔を両手で隠した。すごく気持ち良く寝てたから、よだれとか垂らしてないと良いのだけど。




「ほら。」




頬に当てた時に離してしまった手をひとつ、掴まれる。




「いくよ。」




< 241 / 599 >

この作品をシェア

pagetop