風が、吹いた
「…千晶、起きて?」
もう少し、寝ていたい…
えーと、ここはどこだっけ。
……………
「!」
がばっと体を起こすと、さっきよりもやや増えた乗客の冷たい視線にさらされた。
隣で肩を揺らして笑っている椎名先輩を見て、できるものならこの場からいなくなりたい衝動に駆られる。
「降りるよ」
繋いだままの手を引っ張られて、電車を降りた。
「すぐに起こしてくれれば良かったのに…」
完璧な八つ当たりをしてみる。
「見てたかったから。起こすのもったいなくって」
「!」
八つ当たりが墓穴を掘ることになったらしい。
見られてたのか、と今更ながら顔を両手で隠した。すごく気持ち良く寝てたから、よだれとか垂らしてないと良いのだけど。
「ほら。」
頬に当てた時に離してしまった手をひとつ、掴まれる。
「いくよ。」