風が、吹いた
「ご苦労さん。じゃー、そろそろ各自自分の席に着いていいぞー」
先生たちの掛け声で、準備が終わりを告げ、それぞれがそれぞれの席に着いた。
ざわざわという音と一緒に、体育館が人で埋まっていく。
―この中に、椎名先輩のお父さんとか、お母さんとか、居るのかな。
ついつい、きょろきょろと父兄の席を見回していると、先生からじろじろ見るなと注意された。
後ろから聞こえる押し殺した笑い声は、吉井に違いない。
唇を噛みながら、前に向き直った。
音楽が鳴り始めた。
いよいよ、卒業生の、入場だ。