風が、吹いた

「くくっ」




我慢できないとでも言うように、浅尾が笑い出した。


堪えているようだけど、全身で堪えているようだけれども。



その小刻みな震えが、いけすかない。




「笑う所じゃないでしょうよ。」




高い身長をやや折り曲げて、いつまでも笑ってる浅尾を置いて、教室から出ようとした。




「いや、倉本ってさ、何でも興味なさそうにしてるから。」




まだ笑いを含んだ声で、浅尾の声が背後から追いかけてくる。




「今日みたいに、担任に注意されるまで何かを見てるってこと、今までなかったろ。」




出入り口で真横に並んだ。



「昼休み教室に居ることだって、珍しいのに。吉井たちにも言われてたじゃん。」




「それって浅尾に関係あること?」




頬辺りに突き刺さるような視線を感じながら、廊下を見つめて言った言葉は、自分が思ってるより冷たくてきつい気がする。
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