聖夜は恋の雪に埋もれて
「ねぇ、いつから、私のことを?」
 それからしばらく後、駅前のベンチに空きを見つけた私たちは、並んで座っていた。
 そして、気になることを私が訊ねる。
「気持ちに気づいたのは、もう少し後だけど……多分、幼稚園の頃からだな。覚えてる? 俺が膝をすりむいて、水で洗ってたとき、麗がすぐに自分のハンカチで傷口を拭いてくれたこと」
「えっ?」
 全く記憶がない。
 そんなことあったっけ。
「その顔……さては覚えてないな」
 愉快そうに笑う奏が続ける。
「まぁ、幼稚園児の頃だから、仕方ない。でも、俺にとっては、忘れられない出来事だったよ。思えば、あのときから麗のこと、好きだったんだろうけど……気づかなかったな、自分の気持ちに。で……麗はいつから?」
「おはじき事件からだよ」
 きょとんとする奏に、私はその出来事について説明した。



「そんなことあったのか……。しかし、むかつくな、その先生。証拠もないのに、最低すぎる。麗がそんなことするはずないだろうが」
 奏は、あのときと同じく、大いに憤慨してくれているみたい。
 その様子を見て、また涙が溢れてくる私。
「もう泣くなって……。俺がそばにいるから」
「そんなこと言われると、嬉しくて涙が止まらないままだよ……」
 すると、奏は少し困ったような笑顔に変わる。
「じゃあ、言わないでおく」
「ダメ。もっと言ってよ」
「じゃあ、言う。そして、キスもする」
 またキスしてくれる奏。
 ほんと、夢みたいだ……。
 私はまた、思いっきり両頬を両手でつねって引っ張った。
 うん、夢じゃない……!
「ぶはっ! おい、いい加減にしろ! せっかくの雰囲気を、まーた変顔で台無しにして……」
 大笑いしながら奏は言う。
「だって~。夢じゃないか心配で」
「まぁ、俺は麗のそんなところも好きだけど」
 ドキドキさせられっぱなしの私。
「私も、奏の全てが好き!」
 そう言うと、今度は私から奏にキスをした。

 すると、遠くで鐘の音が鳴り出した。
 駅構内にある鐘で、8時を知らせているようだ。
 思わず、またイルミネーションに視線を戻す私たち。
 雪の中で輝くイルミネーションを見ながら、私は奏に身体を摺り寄せた。



                  【完】
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