ファミリー
左肩に冷たい風を感じた。

高森悟(たかもりさとる)は反射的に
肩先に目をやり、視界の端にいるその少年
に気がついた。

ちょうど患者の処置を終え、
仮眠室に戻ろうと歩いている時だった。

左手にはナースステーションがある。

そのドアの前に、一人の子供が背を向けて
立っていた。

頼りないくらい薄い体つきと、ドアレバー
の少し上に顔が来る背たけ。

高森からは茶色っぽい髪と細いうなじしか
見えないが、まだ七、八歳くらいに思えた。

本来なら深夜の内科病棟で見かけるよう
な人影ではない。
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