狂気の王と永遠の愛(接吻)を・センスイ編収録

嫉妬の念Ⅱ

『…お父様?』


キュリオとの約束は確かに夕食後だったが、部屋に来るほど急ぎな用だったのだろうか?

ふと彼の視線がアオイの可愛らしいベッドに注がれる。


(枕がふたつ…)


『…カイを迎い入れる準備でもしていた?』


『はい…、準備だけしてからお父様のお部屋に行こうかなって思って…』


『…私はすぐにアオイを解放するとは言っていないはずだが』


腕をおろし、ゆっくり近づいてくるキュリオ。


『…えっと、お父様…御用件は何でしょう…』


ジリジリと近づいてくる父親に圧倒され、後ずさりするアオイ。


『なぜ逃げる…』


『いえ、別に逃げているわけでは…』


視線を下げたアオイの腕をキュリオが掴んだ。そしてそのまま引き寄せられ、腰を抱かれる。


『…私の用件はすぐに終わるものではないよ』


唇が触れ合いそうなほどに顔が近づき、キュリオの色香がアオイの神経を甘く痺れさせていく。


『それはどういう…』


『…お前の一生、いや…』


『アオイの永遠の時間を要することになるだろうね』


『それって…』


サラリと流れた美しい銀髪に目を奪われていると、


―――次の瞬間…


頬に感じるしっとりと柔らかい感触。驚きにキュリオの瞳を覗き込むアオイ。


『おとう…さま』


瞳が合うと…腕を掴んでいたキュリオの手が離れ、今度はその指先が物欲しそうにアオイの下唇をなぞった。


それはまるで…片想いの彼女への口付を必死に堪えるかのような、甘く切ない仕草だった―――



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