狂気の王と永遠の愛(接吻)を・センスイ編収録

センスイとアオイ…近づく距離Ⅰ

(…え?…足?…ううん、膝?がなに…?)


しばらく考え、合点のいったアオイは驚きに瞳を見開いた。


「…あ…」


「…まさか…センスイ先生?」


"センスイ"という名を呟いたアオイの唇が見えたかどうかはわからないが、視線の先の彼は大きく頷いている。


「…っ!」


(…間違いない…っ!!)



とたんに胸が高鳴り、いてもたってもいられないアオイは長い髪を振り乱して室内へと駆けこんでいった。肩から滑り落ちたタオルもそのままに、丈の長いワンピースを手繰り寄せ、タッと部屋を飛び出したアオイは天鵞絨(ビロード)の絨毯が敷き詰められた巨大な階段を勢いよく下りていく。


すると…その姿を目にした家臣や女官たちが慌てて後をついてきた。


「…姫様っ!?いかがなさいましたっ!?」


アオイは走る速度を緩めぬまま、振り返り叫んだ。


「すぐ戻るから心配しないでっ!」


「で、ですがっ!外はもう…っ!!」


「お待ちください姫様っっ!!」


バタバタと背後に迫る足音の数が先程よりも増えたような気がする。


(どうしよう…)




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