君の名を呼んで 2
 検査入院は一日限りで、私は次の日には退院。
 桜里が付き添いに来てくれた。

「桜里、日本に来てたの」

 聞けば彼は私に大きな箱を手渡して

「Happy birthday」

と、完璧な発音で言った。

 そうか、誕生日を祝いに来てくれたんだ。

 箱を開ければ、深い赤色の綺麗なワンピース。エアリエルの新作らしい。
 大人っぽいそれは、私に着こなせるのか微妙だけど。

「絶対似合いますよ。君をイメージしてデザインしたんですから」

 桜里は甘々なセリフを吐いて私に微笑んだ。
 自分の実父とはいえ、ドラマみたい。贔屓目無しに、彼は格好良い。

「てめぇはいちいちやらしーんだよ」

 後ろから彼に鋭い毒を吐く、私の旦那様。
 桜里は皇に呆れた視線を向けて言う。

「父親に向かってそれはないでしょう。大体君は雪姫におめでとうを言いました?」


……ん?


「言われてない!そういえば、言われてない!」

 私がガバッと皇を振り仰いで言えば、彼はしれっと返してきた。


「俺がそういうの言うタイプか?それに誕生を祝うならお前を産んでくれた、お母さんに感謝だろう」

 そりゃそうかもしれないけど!

 桜里がボソッと呟く。

「その感謝の半分は僕にも権利があると思いますが。ありがとうお父さんと言ってご覧なさい。いやまて、城ノ内君にそんなこと言われた日には、気色悪くて死ぬ。やっぱりいいです」


 なんて理屈なの。本当に仲悪いなあ。
< 105 / 140 >

この作品をシェア

pagetop