君の名を呼んで 2
その時、がちゃりという音と共に扉が開き、隣室の光が漏れてくる。
光を背にして立つ人が居た。
シルエットと、わずかに見える姿はーー男性。

歳は三十前後だろうか、どこにでもいる普通の男性。
きっとスーツを着てれば、真面目そうなサラリーマンに見えるだろう。

ーーだけど。


「目が覚めた?」


ひどく嬉しそうな声に鉄拳を喰らわしてやりたい。


近づく男は私が思い出した通り、以前にナナミちゃん達の前で、城ノ内副社長が取り押さえた変質者。

やっぱりストーカーだったか。
私を捕まえて、『アイドルに会わせろ』とか要求するつもりかしら。


「あなたどういうつもり?これもう完全に犯罪よ」


「やっと帰ってきたね、雪姫ちゃん」


は?
なんで私の名前知ってるの?

噛み合わない会話に、顔をしかめた。
もしかして私の知り合いなのかと思ったけど、やっぱり見覚えは無いし。
駄目だわこれ、なんか逃げる手段はないかな……。

私は必死で未だに少し霞む目を見開く。
男が開けっ放しにした扉から漏れる光で、部屋の中が照らし出されて。

「ひ……っ」

その壁を認識して、愕然とした。


壁いっぱいに張り出された、女の子の写真。
幼いものから、中学生くらいまでの、全て同じ少女の写真だった。


私は、この子を知ってる。



ーーこれは、わたしだ。
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