重い想われ 降り振られ
橘は手にしていた荷物を放り出し、とっさに真理子を庇った。

音も無く鋭い刃先は橘の脇腹に突き刺さった。

橘の背後から睨む恵子と目が合った真理子は恐怖した。

真理子を憎しみの目で見る恵子に、声も出せず立ち尽くした。

痛みに顔を歪めた橘は「うっ・・・」と呻いた。

「優斗は渡さない・・・。」

恵子が呟く。

真理子を抱く橘の腕が力を増し、苦しい。

橘は左手で恵子を振り払い、突き飛ばした。

突き飛ばされた恵子の手が赤い。

徐々に崩れていく橘。

全てがスローがかったように鮮明に映る。

真理子の服がべっとりと生温かい。

橘を支えようと伸ばした手は真っ赤に染まり、するりと橘の体を支える事なく
滑り落ちた。

「いやぁぁぁぁぁぁ。」
< 186 / 236 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop