アイス・ミント・ブルーな恋[短編集]
確かに私が描いて行き詰まっていたシーンは、ヒーローがヒロインのおでこにキスをするところまでだった。

茫然として額をおさえたままでいると、イチは形の整った眉を顰めた。

「何故気まずそうにしている。既にヨリ様が俺の顔をモデルに漫画を描いていることは知っているぞ」

「バレてる! なぜ!」

「つまりヨリ様は俺の顔が好みだということも知っている」

「やめてあげて!」

「大丈夫だ、オスとしてのああいう機能も最新型には搭載済みだ」
、、、、
「ああいう機能って何!?」

思わずツッコミを入れると、イチはきょとんとした表情で「言わせるのか?」と問いかけてきたので、私は頭を抱えた。

……ロボットと人間は今、完全に共存しようとしている。

今までの自分にとっては信じがたいことだったが、予想をはるかに上回るイチの「オス」の匂いに戸惑ってしまったことは事実だ。


……私もいつか、イチと完全に共存できる日が来るのだろうか?

私はいつかそれを、望む日がくるのだろうか?

、、、、
「ああいう機能は要らないから、バスタオルの干し方は覚えてね……」

「ああ……分かった」

「今よく思い出せないって顔したよね? どんだけ私の命令イチに響かないの!?」

「分からん、興味が無いんだろうな」

「ポンコツロボット!」


とりあえず今は、イチといる毎日がなかなか楽しいことは事実であるので、

お見合いはもう少し先送りにしようかと思う。



end
< 50 / 119 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop