フキゲン・ハートビート
思わず、そのきれいな顔に手を伸ばす。
それが、合図だった。
せきを切ったように、再び止めどないキスの雨が降ってきた。
月明かりの差しこむ部屋、四角いベッドの上で、あたしたちは溶けあった。
寛人くんの指先はとても繊細で、
それでいて熱くて。
その指先で、何度も何度も、優しく頭を撫でてくれた。
そのときは決まって、触れるだけのキスをくれた。
言葉はない。
甘いせりふもなければ、互いの名前を呼ぶことさえ、しない。
それでも、こんなに優しくてあたたかい行為を、あたしは知らない。
恥ずかしいくらいに、いままでにないほど敏感だった。
指先で、くちびるで、あたしのすべてに触れる男も、余裕はなさそうだった。
どこにもぶつけられない熱をふたり、吐きだして、吐きだして、吐きだしきったあと、手をつないで、眠った。