フキゲン・ハートビート
でも、それはまったくの見当違いで。
大和には“本命の彼女”がいたのだ。
大学1年のころからつきあっているらしい、おっとりした、かわいらしい女性だって。
ソフトサークルの仲間だって。
ああ、そうかって、パズルのピースがはまっていくみたいに、すべてに納得がいった。
大和に告白されたのって、そういえば、あたしがソフトサークルに入らないと決めたときだったな。
これで安心して二股をかけられると思ったわけね。
あたしのほうが“浮気相手”だなんてこと、わかっていた。
そう、なにかあったときに切り捨てられるのは、絶対的にあたしなんだろうって。
それでも、あたしは大和のことが好きだった。
信じたかった。
最後にはあたしを選んでくれるんじゃないかって、ダサすぎる希望を捨てきれなかった。
そうやって、ずるずる、ずるずる、不毛な恋を続けて。
なんにも知らないふりをして。
でも結局、“本命の彼女”にすべてがバレて。
大和は当然のようにあたしを捨てた。
驚くほどに、あっさりと。
“蒼依のこと本気で好きだった。でも俺、今更あいつを捨てらんねえよ。
……だから、ごめん”
よくそんなことが言えたな。
本気で殺してやろうかと思った。
愛情が大きければ大きいほど、そのぶん憎しみも大きくなるんだってこと、身をもって実感した。
でも、こんなクソヤロウにすがりつくようなみじめな女には、死んでもなりたくなかったから。