許婚でたまるか!

溢れる涙

その日の夜ーー




「ただいま帰りました、幸子さん。」


ヒロが美香の家に帰ってきてリビングに入ると、テーブルには一膳夕飯が残されていて、しっかりとラップがされていた。


ヒロは不思議そうにその冷たくなった料理を見ていた。




と、そこへ。



「おかえりなさい、ヒロ君!お風呂空いてるけど先に入る?」


と、美香の母親幸子がタオルを抱えてヒロの元へ歩み寄った。



「え?……あ、いえ!僕は後で入るので、お構いなく。………それよりも幸子さん。あの、僕言い忘れてたみたいで、すみません……。」


と、ヒロが残された夕飯を見て申し訳なさそうに幸子に謝る。


「あら?なんのこと、ヒロ君??」


「僕、友達と夕飯食べてきちゃったので、本当はいらなかったんです。すみません……。」


とヒロが頭を下げると、



「あら!いやだぁーー!!ヒロ君ったら!あたしまだそんなに衰えてないわよ?!オホホホ!」



と、ヒロは幸子に肩を思いっきり二度叩かれた……。
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