君のココロの向こう側
美容師になった隆太郎が髪に触れてるんだ、と思うとなんだか変な感じがして、くすぐったい。



「……」



鏡越しに見る隆太郎は真剣な目をしてる。

別れたときとはまた違う、強い目。



「隆太郎」

「……ん」



私が名前を呼ぶと、一度は改まった言葉がくだけた。

そっちのが話しやすくていいや。



「智也くんのお父さんの名前、聞いちゃった」

「……」

「竜也さんって言うんだってね」

「……っ」



私の髪をピンで留めながら、隆太郎が一瞬戸惑ったのがわかった。



「隆太郎は智也くんのお父さんじゃないんだよね?」

「……」



口を閉ざしたまま、黙々と手を動かす隆太郎。



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