君のココロの向こう側
そんな幸せな未来を隆太郎の隣で過ごしているのは私だと、あの頃は本気で信じてた。



「……もう遅いよ。まだ肌寒いし、早く帰んなよ」

「あ……うん」

「智也くん、また明日ね!」



下手な逃げ方だと思う。

けどもう、私のいない、大切な人の幸せを目の当たりにするのはつらかった。



「……あ。峰!」



門の手前で立ち止まった隆太郎が私の名前を呼ぶ。

それだけで嬉しい、なんて。

私の時計だけ、止まったままね。



「……な、何」



ドキドキしながら言葉を返す。

そんな私はお構いなしに隆太郎は口を開いた。



「明日、仕事終わったら時間ある?」



駄目だとわかってた。

これが許される想いじゃないことも。

だけど私は頷いてしまったの。



止まったままだった秒針は、カチリと音をたてて逆回りに動き出した。



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