キスの意味
塚本さんの手は、嫌いじゃない。むしろ、『好き』かも・・・

「そこ～!!いつまでいちゃついてる～！」

高野主任が叫ぶ。

「いちゃついてません！作戦会議です！」

高野主任に、叫び返す。

私は塚本さんを見て、人差し指で自分の耳を指した後、その指をクイックイッと曲げた。

私の意思が通じたようで、塚本さんが腰を屈める。

離れているので、無理に“ナイショ話”にする必要はないだろうが、一応、演出として・・・

「最初のターゲットは、高野主任です。足の速くない津村主任を囮にするために、いつもそばにいます。津村主任を狙うフリをして、高野主任を捕まえます」

高野主任達の位置関係を確認して、続ける。

「私が津村主任を狙っていくので、塚本さんは、高野主任を見ててください。一番近付いた所で、私の手を引っ張ってください」

「了解」

私が右手を差し出すと、塚本さんが左手で、しっかりつないでくれた。

「“パーフェクト”狙ってます！」

私が「ニッ」と笑うと、塚本さんも「ニッ」と笑った。

「了解！」

私達は、「ヒューヒュー」言っている野球中年達に向かって、走り出した。

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