キスの意味
「あれ、水野君一人?」

「はい。丸岡さんは、席を外しているだけなんですけど」

右斜め前の塚本さんを見上げ、薄く笑いながら答えた。

「塚本さん、教えてください」

高野主任に依頼された見積書に添付する資料の保存先がわからない事を話す。

私の言葉を聞きながら、まだ座っていなかった塚本さんが、私の方に移動してくる。

移動する塚本さんを目で追いながら話していたが、最後には、自分のパソコンの画面を、顔を少し近付けて見ていた。

「それらしいフォルダは、開いてみたんだけどな・・・」

私が呟いた時、後ろに塚本さんの気配を感じた。

私の両手は、デスクに置いたままになっていて、右手は、マウスに添えられたままだ。

背中越しに、塚本さんの気配がさらに近付いたように感じた時、視界の両端に、塚本さんの両手が写りこんできた。

何を考える隙もなく、マウスに添えられたままだった私の右手に、塚本さんの右手が触れる。

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