君が好きだよ

 手元には旅行会社でもらっておいたパンフレットがある。
 一緒に旅行に行こう。
 その一言が言えなくて、もう一週間になる。結局電話じゃなんだし会った時にと思いながら先延ばしにして、とうとう今日になってしまった。予定の都合もあるし、これ以上引き伸ばすわけにもいかない。
 今日こそは伝えなくては。
 個人的にはのんびり出来る露天風呂のある温泉が希望だけれど、もし彼女が望むならディズニーランドで三時間並んだって構わない。


「はい、どうぞ」


 ほかほかと湯気を立てたハンバーグの皿がテーブルに並べられる。付け合せにレタスとブロッコリーとコーンと人参のグラッセ。レンコンのきんぴら。わかめと豆腐の味噌汁に炊きたての御飯。


「普段まともなもの食べてないでしょう?玄関のゴミ、お弁当の空き箱ばっかり」


 言わなくてもバレている。自炊して不味い飯を食べるくらいなら手間のかからない外食の方がいいので、飲みに行かない日の晩飯はもっぱら出来合いの弁当だ。
 だからこそ久々の彼女の作る料理はとても美味しかった。


「ハンバーグ、冷凍しておくからね。レンジで温めて食べて」

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