kiss of lilyー先生との甘い関係ー
「そんなに綺麗か?」

 振り返ると先生はマグを二つ持って立っていた。

「きれいよ、とっても。ここに来る人に驚かれない?」

 水樹先生は一つをわたしに手渡してくれた。

「ここに誰かを招くのはじめてなんだ」

 誰も来たことがないのか。

「小さな子供なんて来たら飛び跳ねると思う。わたしだって雪でも振ったらそうしそうよ」

「去年の二月は、たしかに振ってて綺麗だったよ」

 そう言って自身は後ろのソファに座りにいった。


 二月なんてあっという間だ。わたしはここから見える雪景色のためだけに待ち遠しかった。

 だけど、そう考えると卒業なんて本当に間近ね。わたしは卒論を出して卒業を待つだけだと浮かれていたけど、学部を卒業するというのはもう社会人になることだと思い直した。

 就職が決まっている子の方が、この意識が強いかも。

 わたしも院に進むからと言って子供気分ではいられない。これからは権利ばかり主張するのではなく、義務と責任を意識してしっかり研究に携わろう。

 コーヒーの水面と曇り一つないガラス窓から見えるビルの明かりを見比べながら、そんな決意を秘めた。
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