夫婦ですが何か?
「何で?って顔・・・・・」
言いながら私の頬の涙をぬぐう仕草に優しさを感じる。
でも分からないの。
何が嬉しいと感じたのか。
もしかして私との子供を本気では望んでいなかったのだろうか?
そんな不安要素高い疑問まで浮上させると、すかさずそれを打ち砕く返事が返される。
「一応・・・誤解しないで。・・・・出来てなかった事は・・・やっぱり残念・・・」
「・・・・・すみまーーー」
「でも、そのショックは俺の分も全部千麻ちゃんが受けて泣いてくれてる・・・・・・・」
「・・・・・・・」
「そんな千麻ちゃんに・・・・・・・俺、無茶苦茶愛を感じて感無量なんだけど・・・・・」
こつんと痛みも伴わない額の接触。
彼の口元がニッと悪戯に笑って歯を見せて、
そしてゆっくりと、ゆっくりと・・・、
触れ合う。
「んっーーーー」
しっとりと密着。
求め合うようないつものキスではなく。
どこか・・・・感情を示すような。
しっかり重なって時々柔らかく啄む。
激しくなく、静かに穏やかに。
唇が彼の熱に満ちる。
心底思う。
この人の子供を宿してあげたかったと。
これもまた・・・・この結婚を決めた時の様な同情?
でも、この人から向けられる感情は・・・・、
あの時とはまるで違う。
愛されていると・・・・・・痛い程に感じる。
「・・・・・・・俺との子供・・・・・出来てなかった事に悲しんでくれてありがとう・・・・・」
「・・っ・・・ふぅっ・・・」
「・・・・・・・・俺の・・・最高の奥さん」
最高?
本当に?
どうしよう・・・・・まだ悲しい感情も強くあるのに。
私はいつだって・・・・あなたの賞賛に弱いのよダーリン。
「好きよ・・・・・茜・・・・」
純粋な感情を口にした。
私と言う女は本当・・・。
ここまで自分が追い詰められないと素直な言葉を口に出来ないなんて。
こんな欠点の多い女を最高だと賞賛してくれたあなたが好き。
だからこそその素直な響きに喜んでほしかったのに。
捉えるのは困ったようにクスリと笑う彼の姿。
いつもなら喜んでくれそうなものなのに。と、疑問でグリーンアイを覗き込むと。
「なかなか・・・・合格点な素直さ」
「・・・・でも、・・・不合格ですか?」
「・・・・模範解答・・・いる?」
悪戯に揺れるグリーンアイ。
きっと、また・・・・弾きだすのはクサイセリフなんじゃないの?
ねぇ、ダーリン?
「是非・・・・お願いします」
それでも今は・・・
「愛してるよ・・・・・・・千麻」
傷ついた心には何よりもの特効薬だわ。
得意げになって言葉を弾き見事な弧を描いた彼の唇。
そして期待してる?
私もそう言い直すって。
言わないわよ。
だからその代わりに。
「茜・・・・」
口元の弧を覆い隠すキスで感情を返した。
「合格点・・・」
そうでしょう?
ダーリン・・・・。