夫婦ですが何か?





「・・・・エンゲージリングだと思って・・・・・」


「・・・・・・・何で・・・」



いらなかった。


そんなの・・・・必要なかった。


もう夫婦の証として充分に最初の指輪役目を果たしていたのに。


気を抜いたら泣き出しそうだ。


混乱して、困惑して、不安で・・・・。


助けを求めて彼を見つめても返されるのは期待に満ちたグリーンアイで。


ねぇ・・・、


あなたもつくづく・・・・夢見がちなの。



「千麻ちゃん・・・・」



柔らかい声音で、労わるような微笑みで。


そっと伸ばされた彼の手が私の頬に触れる。


いつだってそのぬくもりに安堵して、癒されて。


必要な甘さだった筈なのに・・・・。






苦い・・・。




苦いと感じる自分が・・・・・・悲しい。





苦しい・・・。





「・・・・・・茜が・・・好き」





言葉を必死で弾けばどこか安堵したような彼に再度きつく抱きしめられた。


よかった。


そう安堵したのは・・・・、


彼を失望させるような返事をしなかったから。


そして・・・浮かんだ涙を見られずに済んだから。






左手が重い・・・。


あなたとの愛のバランスが崩れる。





ああ、今までも・・・保つのに必死だったのに。













ねぇ、今も・・・・、


後悔してる。




あの瞬間・・・あなたの期待に背いても、


時間を求めたら・・・・







私たちは笑って一緒にいたんじゃないかって。








あのアップルパイの味が恋しい・・・・。






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