ひまわりの約束



〜日向side〜





葵にあの日の話をしてから1週間。



10月も下旬に差し掛かり



空には数機のバルーンが飛び立つ



この街にも
ようやく秋がやってきた。




ーー昼休み


屋内テラス



俺と煌月は
買ってきたパンを食べる



昼休みの定番だ。



「なぁ。煌月。」


「あぁ?なんだよ。」



「…葵から告白の件。断られたらしいな。」


「んまぁな。やっぱり俺のことは友達にしか思えないんだって。」



「…そっか。」




「…葵ちゃんは
やっぱり日向がいいんよ。
日向と仲良くなりたい。

あの頃みたいにはなれなくても

また笑顔を見せて欲しいってよ。」




「…俺の…笑顔。か…」




「…病気の件も
今のところは安定してんだろ?

いい加減さ。葵ちゃんの気持ち
考えてやれよ。
お前に自信がないのも、
家庭がゴタゴタなのもわかってる。

だからこそ葵ちゃんの支えが
必要なんじゃねぇのかよ。」




「…」






「葵ちゃんなら話しても大丈夫やろ?

わかってんじゃねぇのかよ。」



「…っ!!」

「…それは…」







「この5年半に何があったのか。

ちゃんと葵ちゃんには話せよ。

過去は変えられねぇ。
葵ちゃんを傷つけた過去も
家族のゴタゴタも
消したくても消せない


でも未来ならいくらでも変えられる。
過去も笑い飛ばせる日がくる。


今の気持ち
お前が倒れる前に

お前の言葉で
ちゃんと伝えろよ。

じゃねぇと
思ってるだけじゃ
意味ねぇだろ!!


大事なものを
無くしたくないからって


いつまで我慢してんだよ!!!」







「もうこれ以上何も失いたくない。

大事なものを作りたくねぇんだよ。




自分にとって
大切なものほど
失った時の
辛さ
悲しみ

でかすぎんだよ。


だから…」



「…日向。」


「…大切なものに裏切られ
失う辛さ

当たり前が当たり前じゃなくなる瞬間

俺は何度も経験した。

心はズタズタになる

でもそんな時の支えは

葵と離れる時に約束したこと。
葵の笑顔だった。


俺も葵から見たら
裏切り者だっただろうけどな。


だからこそ関わらないと決めてたし


もう大事なものを作らないって
決めたんだよ。」


大事なものほど
辛いことはない。


大事なものが
近ければ近いほど
失ったときの落差は
ものすごく大きい。



「…あとはお前が決めろ。」



「…」


「まだ、時間はあんだからさ。」



「…あぁ。」


「さぁてと。教室戻りますか。」


ゴミ箱にゴミを突っ込むと
足早にテラスを後にした。





…もう何も
失いたくない


…怖いんだよ。


…また


…繰り返すのが






〜日向side end〜









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