スケッチブックに描くもの

「佐伯君転校したって! アリス知らないんだよね?」
「へ!? なに?」

 涼が転校って何?

「やっぱり。今さっき佐伯君のクラスで聞いてきたの」

 莉子がスケッチブックを握り続ける私の手に手を重ねて言う。

「アリス。大丈夫? アリス?」

 涙がやっと出てきた。この事態に気づかない、いや気づいてないフリをしようと必死にあがいたけど、涙が追いついた。

「アリスー!」

 莉子が私を抱きしめる。莉子は何がなんだかわからないだろう。私もわからないから。


 いったいどうやって学校から家に帰ったのか思い出せない。きっと莉子が送ってくれたんだろう。
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