生きることの意味【完結・加筆完了】

「話す?」



そうやってニッコリ笑ったサトルさんの手の中にあるスマホ。
その画面に写された緋人の名前に目を見張った。


サトルさんが通話ボタンを押せば、すぐに緋人に繋がる。


どうしても、それだけは避けたかった。


昨日今日で、サトルさんと一緒にいるなんて。
緋人に知られたくない。



それに、サトルさんに聞かれるなんて緋人が嫌がる筈だ。
二人の間に何があったかなんてわかんないけど、それだけはわかる。



ぐっと奥歯を噛み締めた後。


「……話します」


あたしは観念して、そう口にした。


満足そうに笑ったサトルさんは、スマホをポケットにしまって先に改札に向かう。
その後ろを黙って付いて行った。
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