生きることの意味【完結・加筆完了】
本音


昔の記憶を辿って、香奈の家まで歩いたあたしは緊張しながらインターホンを押す。


中学の頃、よく遊びに来たこの家。
大きな庭付き一軒家が羨ましいって思ったっけ。
うちはマンションだったし。


それに不満を持ってたわけでもなかったけど、やっぱりどこか憧れていた。



『ハイ、どちら様でしょうか』


インターホンから聞こえて来たのは、懐かしい香奈のお母さんの声。



「あ。杏奈です」

『えっ。杏奈ちゃん?』

「はい、香奈のお見舞いに来まして」

『ちょっと待っててね』


それからすぐにガチャリと音がして玄関のドアが開いた。
扉の影から姿を現した香奈のお母さんは、少し見ない内にちょっとだけ老けた様な気がする。


でも、あたしの顔を見て漏らした笑顔は昔となんら変わらない。

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