不純な理由で近づきました。



ユスラさんは

「TOMOさんと同じ空間に長時間いるなんて緊張でどうにかなってしまいそうです〜」

と半ば泣いているに近い状態で言っていて。


車に乗ってから、ナルちゃんが兄さん専属メイクアップアーティストのNARUMIだと教えたらそれはそれで卒倒しそうになっていたけど。


こんなに身近に兄さんやナルちゃんのファンがいてくれたなんて。


まるで自分のことみたいで嬉しくなる。



「なーに笑ってるの?りっちゃん」


「ううん、なんでもないの」



首を振ってそう言えば、ナルちゃんもふんわりと笑顔を浮かべてそっかぁ、と言った。



「もうすぐ言ってたとこに着くと思うけど、ユスちゃんもきょーくんも起きてるー?」


「あ、はい」


「だ、大丈夫ですっ」


「あはは、ユスちゃん緊張しすぎだよー?
もっとリラックスリラックス〜」


「は、はいっ」



カインくんの家では水晶みたいに澄んでいた声が今は異様に高くなって。


まぁ、これはこれで……うん。悪、くはない。






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