不純な理由で近づきました。



心当たりがあるのはナルちゃんと別れたあとのこと。


で、でーと…え、あれってデートだったの?


無意識のうちに顔が火照るけど、よくよく考えてみたら兄さんと2人で出掛けるときも兄さんはデートだって言い張ってた。


男の人と2人きりで出掛けることがデートならナルちゃんとのあれもデートだし、恭くんのこともそういうことになるんだよね。


変に意識してしまった自分が恥ずかしい。



「う、うん。楽しかったよ?おいしい甘味屋さんに連れてもらったの」


「甘味屋さんに行ったんだ?」



いいなぁ、と言うナルちゃんに今度いっしょに行こうと返す。



「本格的な抹茶もあったし、恭くんの食べてた羊羮も1口もらったけどすごくおいしかったよ」


「もらったの?」



どこか楽しげな響きのある声に頷くと、ナルちゃんはクスクスと笑った。


何がそんなにおもしろかったのか疑問だったけど、じっとしててと言われた手前、ナルちゃんの方に向くわけにもいかない。






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