不純な理由で近づきました。



視線を合わせないように顔を伏せていたせいか、いきなり目の前に現れた顔に大袈裟なぐらい肩が揺れた。


バッチリと絡んだ視線に一瞬息の仕方を忘れる。震える手を誤魔化すようにぎゅっと強く力を入れた。



「おい、お前近すぎ。怖がってんだろ」


「えぇ〜」



それショックなんだけどー、とあけすけに笑いながら離れた人に少しだけ体に入っていた力が抜けた。



「ごめんな?こいつ軽いけど悪いやつじゃねぇから」


「そーそ、軽くて慣れ慣れしくて最低なだけ」


「フォローになってねぇ…!」



うりゃ!と昼に会った人は3人の中で一番背の低い人の首に手を回して軽く絞めていた。


されている方は「やめろって」とふざけたように返していてポカンとしてしまう。



「いきなりで怖かったろ?」


「あ、いえ、」



近すぎると言って離れるように促してくれた人が「本当にごめんな?」と困ったように言うので今度こそ「大丈夫です」とぎこちなく笑みを返す。


本音を言うと怖かったけど、今はそれだけじゃない。大丈夫。眼鏡がなくたってちゃんと話せる。大丈夫……



「それで、なんでこんなところに1人でいるの?彼氏は?」


「か、かれし?」





< 225 / 257 >

この作品をシェア

pagetop