嘘を重ねて。



「泣かないでよ…ユエ」


いつもの優しいタクの声
そっと 私の涙を拭う



「俺、ユエが好きだよ」


「私も好きだよ…ッ」


「うん。ありがとね」



ほら…そうやって。
タクは困ったように笑うんだ。



「ごめんねユエ。俺のせいなんだ」



「タク…?」



「俺、ユエの弱さに漬け込んだだけなんだ。…ユエが好きなのは、俺じゃないよ。」



私が好きなのは
タクだよ…

涙がまた流れる



「よく考えて?…辛い時、支えてくれたのは俺じゃない…そうだよね?」


「ちが…ッそばに居てくれたのは…タク…ッ」



そうだ。
…生きる事に苦痛を感じてた、あの頃

そばに居てくれたのは、タクだった


…タクだった?




「俺とユエは…身体で寂しさを埋めてただけなんだよ…」


そう…私は
辛い時に限って身体を求めた
タクはそれに応えてくれた


でも…依存してた、だけだったんだ…



「俺は、ユエの弱さを利用した…俺しか頼れないように、しただけなんだよ…でも」


「…っ」



「本当にユエが好きなのは…俺じゃないよ」


ーーーーーーーーーーー


何処かで何かが壊れた音がした


足りなかったのは 私の本当の想い


そこに確かに愛はあった
そこに確かに幸せはあった


でもそれは…依存でしかない。


夜空に浮かぶ花火のように

私とタクの関係は 儚く、散る




《足りない何かと貴方の心》





< 83 / 116 >

この作品をシェア

pagetop