ぎゅっと抱きしめて~会議室から始まる恋~
久遠さんは一歩二歩と黒川の前まで歩き、
足を止め、冷ややかな視線で見下した。
「本来なら、こういうやり方は好みじゃないが……
夏美の危機が予測される状況で、
優しい手段を考えてやる余裕はなかった。
悪いな」
瞳は冷えていても、なぜか久遠さんは「悪いな」と、一言詫びを入れている。
黒川もその言葉に、怪訝そうにしていた。
久遠さんは謝った意味を、淡々と補足した。
「時間がない中で作ったウイルスだから、攻撃性を制御するシステムまで付け足せなかった。
破壊したのは、スマートフォンとノートPCだけじゃない。
メール履歴が残されている関係先PCも、同じようにこのウイルスで破壊されていることだろう」