ぎゅっと抱きしめて~会議室から始まる恋~
「つまり、新時代のバイオエネルギーを無事に商品化できるまでの道筋を、
何万パターンの実験シミュレーションを作成して、研究所に置いてきたということ。
あそこには、研究員が大勢いる。
人数に不足はない。
俺に求められていたのは、手足ではなく、頭脳のみ。
何万通りもの道筋を考えてやったんだから、後は俺のシナリオ通り、実験を繰り返せばいい。
恐らく30年後くらいには、世界にエネルギー革命を起こせるだろう」
多分、私には、久遠さんの言っていることの半分も意味がわかっていないと思う。
それでも、スゴイ!という感想を持った。
久遠さんは研究を完成品に導くためのシナリオを、4年かけて書いてきたということでしょう?
あとは、美果子さん達に、その通りやるよう指示して、私のもとに帰ってきてくれた……。
スゴイ……でも、そうすると、心配事も出てくる。
30年後、研究が世に出た時に、
学会とかに発表する論文には、久遠さんの名前が入らないのではないだろうか?
特許とか権利とか、偉大な発明をした化学者としての名声とか、
最後まで研究に関わらないと、そういう物が手に入らないのでは?