ぎゅっと抱きしめて~会議室から始まる恋~
 


「つまり、新時代のバイオエネルギーを無事に商品化できるまでの道筋を、

何万パターンの実験シミュレーションを作成して、研究所に置いてきたということ。


あそこには、研究員が大勢いる。

人数に不足はない。

俺に求められていたのは、手足ではなく、頭脳のみ。


何万通りもの道筋を考えてやったんだから、後は俺のシナリオ通り、実験を繰り返せばいい。

恐らく30年後くらいには、世界にエネルギー革命を起こせるだろう」




多分、私には、久遠さんの言っていることの半分も意味がわかっていないと思う。



それでも、スゴイ!という感想を持った。



久遠さんは研究を完成品に導くためのシナリオを、4年かけて書いてきたということでしょう?


あとは、美果子さん達に、その通りやるよう指示して、私のもとに帰ってきてくれた……。



スゴイ……でも、そうすると、心配事も出てくる。


30年後、研究が世に出た時に、

学会とかに発表する論文には、久遠さんの名前が入らないのではないだろうか?



特許とか権利とか、偉大な発明をした化学者としての名声とか、

最後まで研究に関わらないと、そういう物が手に入らないのでは?



< 438 / 453 >

この作品をシェア

pagetop