透明な君へ
かくれんぼ

―2年前―



まるでそれは、夜から昼へのバトンタッチが上手くいかなかった、失敗作のような天気だった。いつもならさも当たり前のような顔をして大空のど真ん中に居座っている太陽が、今日は何故だか1人かくれんぼに興じている。

そんな昼下がり。

今日も僕は、病院の屋上に備えてあるベンチに腰掛けて、少し遅めの昼食を摂っていた。僕が研修医としてこの病院へ来てからというもの、一度もそのスタイルを崩してはいない。昼休みは、いつも必ずここで過ごすのだ。


初めは、休憩中くらい1人でぼうっとする時間が欲しいという理由からの事だった。先輩医師や看護師達の、自分を評価するような視線からも、デスクの上に山積みになっている医学書からも逃れ、心も頭も休める時間が欲しかった。


だけどある時、ふと気が付いたんだ。

自分が毎日向かう屋上で、毎日毎日飽きずに自分の事を待っている存在に。
ぼうっとする自分を、ぼうっと見つめ返してくる存在に。


そして僕は思った。その存在が、堂々と誇らしげに輝いているように見えたり、遠慮がちに半分だけ顔を覗かせているように見えたり、雲という宿敵にとおせんぼされているように見えたりするのは、全て自分の気持ちを反映しているからなのではないかと。


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