小悪魔的な彼と悲観的な彼女



…いや、失望した…だなんて。

そんなのは可笑しいか、だって私が勝手に期待したせいなんだから。拓也君には他にも居るって、ちゃんと分かってたはず。それだっていつからか忘れ去られていった、初めから分かってたはずの事実の一つ。

分かってたよ、分かってた。その中でも良いって、別に一番じゃなくても良いって思ってきた、そのはずなのにーーなのに私は今、正反対の想いを抱いている。

その中の一人でも、じゃない。


彼の一番だとしても、それは嫌。


…なんて贅沢なんだろう、なんて強欲なんだろう。一番で一人だと信じてしまっていた自分が居た。だからそんな事を思うようになった。私は拓也君の唯一の彼女だとばかり思っていた。そしてだからこそ、そんな自分に悔む気持ち以上に拓也君に失望してしまった私が居る。


勝手だよね。勝手だけど…もしかしたら、これで良いのかもしれない。


これでようやく私の目が覚める。



< 153 / 202 >

この作品をシェア

pagetop