小悪魔的な彼と悲観的な彼女


腰に回る彼の手が、グッと強くなる。密着する身体にお互いの体温を感じて、更に状況についていけない心臓の動きがより一層私を熱くさせるのだけれど…でも、なぜか口を塞ぐ彼の手は、とても冷たく冷えていて。


「どこにいても何をしてても、どうせ僕はあなたの事が忘れられない」


“だからあなたに嫌われても、あなたの傍に居られるならそれで良い。その方が良い”


そう告げる彼の声が、私の耳元で熱く響いた。

でもそれはなんだか少しだけ、震えているような…必死に押し殺しているような、そんな感じがして…


ーー想いをこぼすのは僅かに震える彼の声。私の言葉を遮るために添えられたのは、冷え切った彼の手のひら。


…あぁ、そうか。そうだったんだ。

彼が怖がっていたのは、これだったんだ。


だったらもしかしたら…なんて。無駄に希望を感じてしまうのは、もう何回目だろう…と、思うけど。


もう、これを最後にしよう。最後にもう一度だけ、本当の拓也君とちゃんと話をしよう。そこで私の気持ちも聞いて貰おう…それで、区切りをつけよう。

どうせこのまま別れたとしても…私だって、拓也君が忘れられないんだから。


そう心に決めた私は、小さく頷いてそっと拓也君の肩に額を寄せた。






ーーどうせ君は、終


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