小悪魔的な彼と悲観的な彼女


「拓也く、」

「求めて無いって…それは随分な事を言ってくれるね、すみれさん」

「え?」

「そんな事言われるの、初めてだよ」


その瞬間、ギラリと拓也君の瞳の奥で何かが光ったーーそんな、気がした。そしてそれを認識した途端にグッと覆い被さる圧迫感のような、ピンと張り詰める緊迫感のようなものに身体がカチコチに固められる。


目は、合ったまま。

お互い向き合ったまま。

初めから今の今まで、そこには同じ服を着たいつもの彼が…あれ?


今目の前に、居るのは誰?


「そっか…やる気出るね」


怒ってたはず。きっと彼だったら不機嫌になって、きっとまたどうして?とかなんで?なんて責められるだろうなって、怒られるだろうなって思って身構えたはずなのに…違った。私の想定は全部外れた。


今目の前にいる彼は楽しんでいる…いや、むしろ喜んでいるような、そんな風に見える。

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