倦怠期です!
とにかく、「だからプレゼントされて嬉しい」という捉え方もあるとは思う。
だけど結局のところ、仁さんが稼いでいるお金は、我が家の生活費に直結しているので、使えない、又は使わないものや、いらないと思ってるものをもらっても、素直に喜ぶことができなくて。
結局15年くらい前からは、ちょっとした食べ物やお花といった、「安くて使える消え物」を、年に1・2度くらい、プレゼントしてくれる。
過去幾度かその失敗を繰り返した夫は、それだと私が素直に喜ぶと学んだようだ。
でもこのプラチナリングは、私がもらって喜ぶプレゼント三原則のどれも満たしていない。
特に「安い」という部分が!

「えっと、嬉しくないとかそういうことじゃなくて・・・高かったでしょ、これ」
「いつか結婚指輪買うって約束したじゃん。20年かかっちまったけどさ、ちょうど結婚20年目って記念の年でもあるし」
「でもあなたはスーツ買ったでしょ?来年度の会社のホームページの撮影があるからって。それに遼太郎だって、推薦に受かれば私立の高校に通うことになるのよ?学割利いても定期買わなきゃいけないし、授業料だって公立より高いのよ。音大に行ってる日香里にも、まだお金がかかるじゃない。それだけじゃなくて、ここの家賃や水道代や電気代、食費って普段の生活費もそれなりにかかってるの。それなのに、こんな高そうな指輪買うなんて。余計な出費じゃない。その上1泊旅行のキャンセル料って余計な出費もできちゃって」

まだ心の中にトゲトゲしさと、色々な苛立ちも募っている私は、つい嫌味を言ってしまった。
でもこれは、私の本音でもあるわけで。
つい意地悪な口調で言わずにはいられない私は、なんて可愛げないんだろう。

「大体結婚20年の記念に1泊旅行なんてしなくても、私はべつによかったのに」
「俺はしたかったんだよ!それに俺は借金してまでプレゼントを買うたりせん。だから金のことなら心配するなっていつも言うとるやろ!」
「心配させてるのはあなたの方でしょ!」

あぁ。今の私、すごく醜くて嫌な顔してるに違いない。
きっと仁さんもそう思ってるはずだ。

上体を起こしていた夫は、ずるっとすべるようにまた横になると、私に背を向けて、布団を頭まで被った。
そして「しばらく寝る」と言った。

つまり「この部屋から出ろ」ってことだと解釈した私は、椅子からスッと立ち上がると、そっと夫婦の寝室から出た。

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