Christmas Eve
有線から、山下達郎の絶望的な歌詞が流れる。


夕方から降り始めた雨は雪に変わっている。


展望台から見下ろす街は、クリスマス仕様の灯りに華やいでいる。

ちらつく雪が灯りに照らされ銀色に光っている。


タイムリミットまで あと、僅かに1時間。



俺は「……きっと来る。必ず来る」と念じながら、彼女の走ってくる姿を思い浮かべる。


♪心深く秘めた思い
叶えられそうにない♪



ポケットの中に手をやり、ふと館内禁煙の文字に気づく。

手持ちぶさたに、宙を切った手で、曇った窓ガラスを擦る。

俺はガラス越しの夜景を眺める。


遠目にはスカイツリーが見える。


東京タワーから、スカイツリーを眺めるのも粋な計らいだと自負している。



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