黒色女子を個人授業
少し答えが尻つぼみになってしまったのは、確かに大城さんに対して特別な感情を抱くときもあるからだ。

でもそれは、いつもと違う出来事が起きたから戸惑ったってだけで、ドキドキしたからって恋だとかそういうんじゃないんだから。


否定する私を横目で見ながら、花は「じゃあ酒井と頑張んなさいよ」と投げやりに言った。


「どうして近場で済まそうとするかな。私と酒井くんが付き合うとか、あり得ないよ」

むくれて言う私に、花はそうかしら? とわざとらしく振る舞った。

「酒井は結構乗り気みたいだけど」

「……え?」

思いもよらない反応に、一瞬困惑するも、すぐにあり得ないと思い直して笑い飛ばす。

「そんな訳ないよ。酒井くんは私のこと、仕事仲間としか思ってないもん」

私が再びオレンジジュースに向き直ると、花は小声でぼそりと呟いた。

「……鈍感」

「え?」

「ううん、もういい」

花は何かを諦めたようで、ため息と共に紅茶を口へ運んだ。


だって、ねえ。ありえないよ。

私と酒井くんは、ただの同期だもん。


どうして花がこんなにも酒井くんにこだわるのか、私にはよく分からなかった。
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