黒色女子を個人授業
ふと、彼は視線を上げた。

「天野さん、せっかくだから、このまま直帰しちゃえば」

「え?」

突然自分のことに話が及んで、思わず動揺する。

「……ちょっと、直帰するには早すぎやしませんか」

「や、全然早くないし。6時だから。……むしろ君の定時は何時なの?」

「……でも、この忙しい中で、私だけ早く帰るなんて……」

「あんまり無理してると、またこの前みたいに倒れちゃうよ?」


『この前』の話を出されて、私は押し黙る。

「あ、あの、その節は、大変ご迷惑おかけしました……」

私は顔を赤くしてうつむいた。
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