黒色女子を個人授業
「やっぱりこれはあり得ません」

私はキッパリと言い切った。

「今の財布が気に入ってるので、結構です」


私が今使っているのは、黒一色のシンプルな財布。

黒って落ち着く。私らしいって感じがする。


「パックリ空いた小銭入れは大丈夫なの?」

彼から出た言葉に思わず私は押し黙る。


そもそもこの騒ぎは、私のお財布が彼の目の前で派手に壊れたことから始まった。

小銭入れのファスナーに手を掛けた瞬間、チャックの部分が大きく破れた。

閉じる機能を無くしてしまったこのお財布は、バッグの中で揺られてはホロホロと小銭をばら撒いている。

入社してすぐに買ったものだから、6年経ってクタクタのボロボロ。

機能以前にところどころ剥げていてみすぼらしい。

確かに、そろそろ替え時ではあるのだけど……
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