青空の下月夜に舞う

チラリと大家さんを見ると、ニコニコ笑って、


「それだよ、それ。そういう事だから」


手を軽く上げてドアを静かに閉めた。

そ、ばっか使ってんじゃねえ!
って言葉は大家さんだから控えとくよ。

折角の日曜日に叩き起こされたのも手伝い、不機嫌MAX。


取り合えず手元の紙に視線を落として、文字を読む。


【この度当アパートを取り壊す事となりました。誠に勝手ではございますが……】


「本日28日より90日後迄に退去願います……?!はあ?取り壊し?!」


思わず手にした紙に力が入る。

90って何?三ヶ月じゃダメな訳?!
てか28日って?

今月の28?いや、先月は31日あった。
だから……


「今週の金曜日じゃん……」


頭が真っ白。
強く握った紙が床に落ち、お尻がペタンと冷たい玄関に着く。


数秒後、ハッと我に返り、散らかった部屋にバタバタと戻る。

通帳、通帳……
家探さなきゃ。
お金は……


小さなタンスの右上を引き、中から通帳を手に取ると、直ぐ様残高を確認した。


最近無駄遣いしてないし、結構あったよね?



「にじゅう……にまん……」



良かった。お金は何とか足りる。
でも……

家に電話しなきゃだよ、ね。



……仕方ないよね。いやだなぁ。

気が重いけど、事が事だ。


携帯を手に取り、電話帳から自宅を出し、通話ボタンを押した。
< 2 / 319 >

この作品をシェア

pagetop