彼に殺されたあたしの体
こんな感情を経験するのなら、死んだときに思考回路もすべて遮断されてしまえばよかったんだ。


なにも理解できない。


なにも見えない。


なにも聞こえない。


そんな状態になっていれば、こんなに苦しい気持ちになることもなかった。


あたしは普通に死んでお経をあげてもらい、ちゃんと成仏できる人々が羨ましかった。


1回だけ95歳のひいおばあちゃんのお葬式に参列したことがあるけれど、寿命をまっとうする死に方が幸せなのだとその時はわからなかった。


死ぬことは不幸だ。


残された者はみんな悲しいものだ。


そう思って疑わなかった。
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