彼に殺されたあたしの体
ミミズは体が半分になっても桜ちゃんの口の中でうごめいていた。


すでに死んでいるのに、死んでいることに気づかずに逃れようともがいている。


それはまるであたしそのものだった。


死んでいるのに死んでいると気づかない。


体は腐敗してしまっているのに、まだ生きている。


死にぞこないのミミズは桜ちゃんに飲みこまれ、そしてこれから生きていく桜ちゃんのための血肉となる。


あたしは想像をゆっくりとかき消して、そして思った。


あたしもそうなればいい。


ほんの少し残された栄養分を虫や草木に吸い取られ、血肉となって誰かの中で生きて行けばいいと。
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