彼に殺されたあたしの体
☆☆☆

それから一か月ほど経ったとき、家族に変化が訪れた。


家族にとっての変化はあたしにとっての変化でもあり、あたしはその変化にすぐに気がつく事ができた。


家の中から犬の鳴き声が聞こえてきたからだ。


桜ちゃんが飼いたいと言っていた犬が、ついに家に来たようだ。


犬の鳴き声は高く迫力に欠ける。


小型犬の子供かもしれないと推測する。


あたしはお金のある家にふさわしい室内犬を思い浮かべた。


フワフワと白い毛並にクリクリとした黒目がちな目。


シッポをひっきりなしに振って、桜ちゃんにじゃれついている犬の姿。


あたしは生前、動物が好きだった。


動物園にはよく行ったし、家の近くにあるペットショップには毎日のように通っていた。


しかし、母親が猫アレルギーを持っているため毛の抜ける動物を家で飼う事はできなかった。
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