彼に殺されたあたしの体
「あの……手紙読んでもらえて嬉しいです。あたしの気持ちを少しでも心の隅に置いておいていただければ、あたしはそれで十分で……」


最後まで言い終える前に、あたしは先生に抱きしめられていた。


嗅ぎ慣れないタバコの香りがスーツにしみ込んでいる。


「好きだ!!」


あたしの体をギュッと抱きしめ、青春映画さながらに叫ぶ先生。


好きって……言われても……。


あたしは先生に恋心を抱いた覚えは微塵にもなかった。


むしろ会話した記憶もないくらい、先生の事は透明人間だった。


それなのに、なに、この状況。


どうにか先生を傷つけずに断ろうと思っていたけれど、どうやらそれは無理みたいだ。


あたしは先生から身を離し、このような事態になった経緯を説明しようと思った。
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